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関西教育学会学会賞の選考結果HEADLINE


第2回 関西教育学会学会賞(2021年度)
岡村亮佑
稲垣忠彦による『授業カンファレンス』論の成立背景と意義」研究紀要第21号掲載)


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受賞理由は以下の通りです。
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 本研究は、稲垣忠彦の授業研究が、授業の一般法則の定立を目指す「教授学の建設」から授業の事例研究である「授業カンファレンス」へと展開していく過程を丁寧に辿ることによって、「授業カンファレンス」論の成立背景と意義を解明することに成功した。
 特に、授業の事例研究の意義が疑問視される現在において、その意義を正面から問い、稲垣の歩みに照らして、「教授学の建設」を目的とする授業研究は授業の複雑性という障壁に直面せざるを得ないこと、授業の事例研究の目的は個別具体的な事例の検討そのものであり、授業の事後検討会はその深層を捉えるための質的な方法論として位置づくこと、授業の事後検討会においては、参加者の対等性を確保することがその形骸化を防ぐ重要な条件となること、という3点の示唆を導き出したことは、顕著な成果である。
 以上のように、本研究は現在の教育学研究に重要な知見をもたらすものである。加えて、対象人物の背景を十分に踏まえて問題意識を理解した上で、問題を突破する過程をつぶさに跡付けており、人物研究としての論述の精度も高い。よって、編集委員会として、本研究を関西教育学会賞に決定する。


第1回 関西教育学会学会賞(2017年度)
森本和寿
「友納友次郎の綴方教授論における『描写』と『自己信頼』―随意選題論争を手がかりとして―」研究紀要第17号掲載)


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受賞理由は以下の通りです。
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 本研究は、従来、系統性を重視する練習目的論者として位置づけられてきた友納友次郎の綴方教授論とその実践について、芦田恵之助との随意選題論争の前後における彼の思考の深まり方を丁寧に辿ることによって、「描写」による「自己信頼」の獲得という新たな特徴を析出することに成功した。
 特に、従来、系統性や子どもを社会に馴致させる側面が強調されていた「練習目的論」の形成過程を追うことによって、友納の綴方教授論に、子どもに自由性を獲得させる意図があったことを読み取った点、随意選題論争の観点を、従来の「自由性と系統性」から「内観と描写」へと転換することを提唱するとともに、友納の「描写」論が写実主義から影響を受けていたことや、その「描写」によって児童自身の「自己信頼」の獲得を目指していたことを指摘した点、さらにそのような特徴を児童の綴方に対する友納の評価・指導という、実践の面からも確認した点は顕著な成果である。
 以上のように、本研究は当該分野に新たな分析視角を提供するものである。また使用される史料の扱いや論証の手続きも妥当なものであり、論述の精度も高い。よって、本研究を関西教育学会賞に決定する。